コンピュータは人が命令を与えることによって初めて動くもの。
コンピュータを理解してプログラミングをうまく活用できる力を身に付けられれば、社会を生きていく中でもきっと役立ちます。
文部科学省は小学校・中学校・高校の教育方針を示す学習指導要領で、「小学校は2020年度から」「中学校は2021年度から」「高校は2022年度から」プログラミング教育を必修化とすることを記載しました。
しかし、プログラミング教育の目的はプログラマーに育てることではありません。
では社会に求められる人材とは具体的にどんな人材なのでしょうか。
そこで今回は、平成30年に改訂された文部科学省の学習指導要領をもとに、「社会で求められる人材とはどのような人物か」についてお伝えしていきます。
もくじ
新学習指導要領で必修化となったプログラミング教育
文部科学省による「小学校プログラミング教育の手引」では、プログラミング教育のねらいとして以下が記載されています。
①「プログラミング的思考」を育むこと
②プログラムの働きやよさ、情報社会がコンピュータ等の情報技術によって支えられていることなどに気付くことができるようにするとともに、コンピュータ等を上手に活用して身近な問題を解決したり、よりよい社会を築いたりしようとする態度を育むこと、
③各教科等の内容を指導する中で実施する場合には、各教科等での学びをより確実なものとすること
簡単に言うと、
「パソコンを使ってプログラミングをガッツリ学ぼうというわけじゃないけど、授業の中でプログラミングの考え方も活用していこう」ということ。
スキルを身に付けるというより、プログラミングを通して論理的思考を学ぼうという方がイメージとしては近いでしょう。
社会に求められる人材とは
文部科学省では、「情報処理」「原子力」「経営・管理」「資源」「機械」「材料」「科学」「電気・電子」の各分野ごとに、求められる人物像が議論されました。
その結果、どの分野でも必要とされる要素というのも浮き彫りになったとしていて、その共通要素の例として以下を挙げています。
- 当該分野の専門知識の土台となる「各分野における基礎的な知識」の徹底的な理解。
- 産業のグローバル化に伴い、多様な地域で、様々な人々と一緒に仕事をしていくための「グローバルな感覚(注1)」の素質。
- 開発から商品・サービスまで、一連のバリューチェーンを俯瞰しプロジェクトを遂行していく「マネジメント力」
- 学んだ知識を現場に適用し有効に活用していくための能力として、「課題発見・解決力」、「コミュニケーション能力」等、いわゆる「社会人基礎力(注2)」として括られる要素。
(注1)「グローバルな感覚」には、単に言語能力や海外の知識にとどまらず、自国の文化や伝統の理解に基づく自己認識や、人類や環境など地球社会規模での調和・共存という視点に根ざした、あたたかい配慮といったことも含まれる。
(注2)社会人基礎力とは、職場や地域社会の中で仕事を行っていく上で必要な基礎的な能力をいい、経済産業省では社会人基礎力を、「前に踏み出す力(主体性・働きかけ力・実行力)」、「考え抜く力(課題発見力・計画力・創造力)」、「チームで働く力(発信力・傾聴力・柔軟性・情況把握力・規律性・ストレスコントロール力)」として、12の要素からなる3つの能力として定義し、共通言語として発信している。引用元:文部科学省 – 1.社会環境の変化と求められる人材像
これを要約すると、「基礎的な知識が身に付いていてグローバル社会にも適応でき、マネジメント力やコミュ力も兼ね備えた人物」といったところ。
また、情報処理の分野が考える「必要とされる人物像」は以下。
- ITの本質を理解した上で製品・サービスを企画して実現する、デザイン力と現実適応力に優れていること
- 優れた分析力・論理構築力に基づき課題の本質を捉え、効果的な解決方法を提案し実践できること
- 世界の情勢を踏まえて日本の産業を俯瞰するとともに、技術者として求められる高い倫理性をもっていること
新学習指導要領で必修化されたプログラミング教育の目的でもあります。
しかし、これだけでは具体的に何が出来れば良いのかは、わかりづらいですよね。
文部科学省が必修化したプログラミング教育でも、プログラミングを覚えることが目的では無いとしています。
そこでここでは、具体的にどんなことが求められるのかを考えてみました。
普段プログラマーとして仕事をしている中で、「これは必要だな」とか「これはもっと勉強しなきゃいけないな」と実感することを厳選してお伝えしていきます。
プログラミング的思考
文部科学省では、「プログラミング的思考」を以下のように定義しています。
自分が意図する一連の活動を実現するために、どのような動きの組み合わせが必要であり、一つ一つの動きに対応した記号を、どのように組み合わせたらいいのか、記号の組み合わせをどのように改善していけば、より意図した活動に近づくのか、といったことを論理的に考えていく力
わかりづらい…
要するに、一から作り上げるのではなく、既にあるものを組み合わせることで自分の意図することを実行できないかを考える力といったところ。
プログラミングが「パズル」に例えられるのも、”組み合わせる”という部分からきていると思います。
コミュニケーション能力
昔はプログラマーと聞くと、「オタク」とか「頑固な職人」みたいなイメージってありましたよね。
今でもそういうタイプのプログラマーは少なからず存在しますが、プログラミングが出来ればいい時代は終わりました。
今は外国人のプログラマーも増えてきていますし、年代によって考え方も違います。
今まで通用してきた事でも、新しく入った外国人や若い人は不安に思うかもしれません。
コミュニケーション力は、部下を持つ立場になればどのみち求められるもの。
そもそも、コミュニケーション能力が高い人の方が求められることは言うまでもありませんね。
プレゼン力
自分の言いたい事を理解してもらうために必要となるのが「プレゼン力」です。
伝え方ひとつで相手の捉え方は良くも悪くもなります。
最近ではプログラマーの仕事も、プログラミングだけでは済まなくなってきたと実感しています。
自分が考えたシステムを提案して、チームで納期までに完成させるというのが主流になってくるのではないでしょうか。
吉高由里子さん主演のTBS火曜ドラマ「わたし、定時で帰ります」の制作会社でも、そういう流れで仕事をしているようすが見られます。
個人情報やパスワードの危機管理ができる
個人を特定できる氏名や生年月日、写真などの個人情報は保護しなければいけないことは個人情報保護法で定められているため、取り扱いには十分注意しなければいけません。
どのように守るのかについて、企業などの組織ごとにルールを徹底していく必要があります。
インターネットを利用したサービスが普及する中で、個人情報やアカウント情報が漏洩する危険性について理解し、常に危機管理を持つことが大事です。
日頃から個人情報の漏洩リスクについて、一人一人が意識しているだけでも違います。
顧客のデータをどこまで取得してどう利用するか、どうやって管理するのかという知識はもちろん、「本人の同意を得る」「紙類は鍵のかかる金庫や引き出しに入れる」「パソコンにはウイルス対策ソフトを入れる」といったルールも必要になります。
分析力
新聞や雑誌でもトレンド化した「AI」と「ビッグデータ」というキーワード
この二つを活用するためには、分析力が欠かせません。
大量のデータをどのように活用するか、大量のデータから導き出せることは何かが明確でなければ、ビッグデータの価値もありませんし、AIとして活用させることも難しいでしょう。
車の自動運転システムや、防犯カメラなどの自動解析システムでは効果が見えてきているものもありますが、今はまだ他の多くの企業で模索している段階とも言えます。
これから5年、10年後はさらに加速していく事を考えると、分析力がある人材は重宝されるでしょう。
Excel、Word、パワーポイントが使える
「Excel」と「Word」を使うシーンって必ずと言っていいほどありますよね。
プログラマーも仕様書や設計書を作る際には、ExcelやWordを使います。
さらに、プレゼン用の資料を作成する際にはパワーポイントを使うこともあります。
ExcelやWordには色々な機能があるので、慣れるまでは大変なイメージもあるかもしれませんが、資料を作るために出来る機能だけを覚えておけば、難しい事はありません。
便利なツールを積極的に取り入れていけば、作業も効率化できます。
まずは、簡単な資料から作ってみてはいかがでしょうか。
画像や映像の編集ができる
ウェブサイトやアプリにも、画像が使われているページはよく見かけますよね。
どんなに機能が優れていても見た目がダサいと思われると、使ってもらえなかったり他の機能が劣っているものに負けることだってあります。
画像や映像をイメージに合うものに加工できる人がいれば、チームの武器になります。
ウェブサイトやアプリが普及していく限り、画像や映像を扱える人は求められていくでしょう。
ウェブサイトやアプリを作れる
プログラミングだけでは、ウェブサイトやアプリは動かすことは出来ません。
Appleに審査をしたり、GooglePlayに登録するのはプログラミングの技術とは別。
ウェブサイトも、環境を構築するには手間がかかります。
プログラマーの中でも一から全てを作れる人って、意外に少ないんです。
それどころか、ウェブサイトやアプリは作れないというプログラマーもたくさんいます。
しかし、ウェブやアプリは既に切っても切れない存在となっています。
プログラミングが出来なくても、一からシステムを構築できる人なら重宝されるでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
この記事では「社会で求められる人材とはどのような人物か」についてご紹介しました。
プログラミング教育に関する取り組みは、今後も加速していくと考えられます。
プログラミング教育が必修化されたことからわかる事は、子供だけに関わる話では無いということです。
押さえておきたいポイントとしては大事なのは、「社会で求められる人材を育てようとしている」ということです。
5年後、10年後、社会で求められる人材になれるよう、ぜひ参考にしてくださいね。
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